但馬牛を中心に扱う卸売会社、株式会社MINAMOTOが2026年9月14日に設立されました。本社は兵庫県豊岡市、代表取締役は亀村悠真氏です。同社は霜降りの量や等級に加えて、牛の飼料や脂肪融点(脂が溶け始める温度)など、脂の質を形づくる要素を大切にしています。生産者から直接預かった但馬牛を、東京を中心とするレストランやホテルへ届けます。届け方は一頭まるごとから部位単位まで、要望に合わせて対応します。

A5の広がりと、インバウンドの食への支出
同社は設立の背景として、二つの数字を挙げています。一つ目は和牛の格付けです。公益社団法人日本食肉格付協会の格付結果(独立行政法人農畜産業振興機構公表)によると、2025年に格付けされた去勢和牛のうち、A5は71.7%を占めました。2018年に初めて4割を超えた水準(40.5%)から、7年で大きく広がっています。同社はこれを、生産者と産地が積み重ねてきた改良と肥育技術の成果だと捉えています。なお、雌の和牛は繁殖を終えた経産牛を含めて集計されるため、去勢とは単純に比較できないとしています。
二つ目は訪日客の動向です。日本政府観光局によると、2026年1〜8月の訪日外客数は2,762万6,300人で、前年同期を2.7%下回りました。一方、観光庁によると、2026年上期(1〜6月)の訪日外国人の飲食消費額は1兆810億円で、前年比4.5%増でした。この伸びは、旅行消費額全体の伸び(1.3%増)を上回っています。
同社は、この二つの数字を同じ変化の表れとして受け止めています。人数が減っても、食に向けられる支出は増えています。そこから、日本を訪れる人や日本の上質な食卓に親しんだ人の関心は「どれだけ」から「どのような」へ移りつつあるのではないか、と見ています。和牛についても、A5はいまも揺るぎない最高等級だとしています。そのうえで、最上の等級が広く行き渡ったいま、一皿の違いを語るには、等級に加えるもう一つの物差しが求められているのではないかと考えています。

等級に添える「脂の質」という評価軸
その物差しとして同社が提案するのが、牛自体が育った環境や飼料に起因する「脂の質」です。同社は、これまで大切にされてきた評価軸と、自社が加える評価軸を次のように示しています。
これまで大切にされてきた評価軸
- 霜降り(サシ)の量
- 枝肉の等級(A5)
- 歩留まり・セリの相場
- 産地と銘柄の名前
MINAMOTOが加える評価軸
- 脂の質と融点
- 最後の一切れまで軽やかな余韻
- どのような環境で、何を食べて育ったか
- 育てた人の名前と、その考え方
同社によると、脂の質は感覚だけでなく数値でも確かめられます。脂肪融点が低いほど口の中で早く溶け、後味は軽くなります。そして、その脂の質を左右するのが、牛が育った環境と飼料です。同社は、生産者がどのような環境で何を与えて育てたかを聞き取り、その考え方とあわせて取引先へ伝えます。脂肪融点などの分析値は、生産者による測定結果があるものについて案内するとしています。

一頭ごとの「個体カルテ」を添えて届ける
同社は、大切な客を迎えるレストラン・ホテルのための卸として、量を追わない方針を掲げています。届け先は、一頭ごと、部位ごとに決めていきます。提供する内容は次の通りです。
- 一頭でも、部位でも:生産者から直接預かった但馬牛を、一頭まるごとでも、必要な部位だけでも届けます。ただし、供給の観点から、特定部位のみの指定が難しい場合があるため、まずは問い合わせてほしいとしています。
- 一頭ごとの個体カルテ:個体識別番号、血統、格付に加え、生産者、育った環境、与えた飼料についての情報を渡します。部位単位の取引でも、店側が客にその一皿の来歴を話せるようにします。
- 納品の後まで:使い方や客の反応を聞き取り、次の提案に生かします。
今後の展開として、料理人・仕入れ担当者向けの試食会の企画・開催と、インバウンド観光客の多いレストラン・ホテルとの試食会の開催を挙げています。取扱いを希望するレストラン・ホテルからの問い合わせも受け付けています。将来的には但馬の生産者との取引を広げ、畜産の事業承継や新たな担い手の参入を支える仕組みづくりにも取り組むとしています。
但馬にゆかりを持つ共同創業者たち
同社の共同創業者は、亀村悠真氏、小畑啓氏、長塚直人氏です。亀村氏は但馬で生まれ育ち、東京で税理士・公認会計士として数字を見る仕事をしてきました。亀村氏は、去勢和牛の7割がA5という数字を、但馬をはじめ全国の生産者が磨き続けてきた技術の到達点だと受け止めています。そのうえで、次に問われるのは「どう育てられた一頭か」だと語ります。育った環境、与えた飼料、脂の溶ける温度、育てた人の考え方といった、等級の先にある違いを、言葉と数字を添えて料理人へ届けたいとしています。また、牛を育てる人の仕事がそのまま一皿の価値として伝わることこそが、但馬牛を100年先へつなぐ道だと考えています。
小畑氏は、生まれ育った豊岡、但馬地方の素晴らしさを伝え、地元に貢献したいという思いを抱いています。伝統ある但馬牛を後世へ残すため、常識にとらわれず新たな挑戦を続ける生産者の想いとお肉を、日本中へ、そして海外へ届けたいと語ります。小畑氏自身はその海外展開を支えるとともに、畜産の未来を拓く新しい技術や研究にも目を向け、産学連携で現場へつないでいく考えです。
長塚氏にとって、但馬は妻のふるさとです。社会人としての出発点は飲食店の店長で、当時は仕入れた食材がどこで、どう育ったのかを、客に十分に伝えられなかったといいます。その後は不動産コンサルタントとして、事業を始める人の場づくりに携わってきました。但馬の生産者が餌や環境にここまで心を砕いていると知り、その思いを料理人へ届けたいと強く思ったと語っています。さらに、不動産の経験を生かし、牛を育てたいという次の担い手が踏み出せる仕組みもつくっていきたいとしています。
同社のシンボルマークは、但馬の山並み、すべての源流である「一滴の水」、純血を紡いできた「牛」のシルエットを、幾何学的に組み合わせたものです。中央から広がるグリッドは、全国の黒毛和牛の99.9%にその血が流れるといわれる、但馬牛の血統の広がりを表しています。このマークには、和牛の“源(みなもと)”を100年先へつないでいくという意志が込められています。本店所在地は兵庫県豊岡市日高町日置951で、事業内容は但馬牛の卸売・販売、ブランディング・販路開拓です。
出典:株式会社MINAMOTO





