地域農業

脱サラ農家が明かす「スマホの中の農村」運営術!4年で2,223人集めた農業系DAOコミュニティの秘訣

脱サラ農家が明かす「スマホの中の農村」運営術!4年で2,223人集めた農業系DAOコミュニティの秘訣

DAOって何だろう?

「DAO(分散型自律組織)」と聞くと、少し難しく感じるかもしれませんね。簡単に言うと、ブロックチェーン技術を使って、特定の管理者なしに、参加者みんなでルールを決めて運営していくオンラインコミュニティのことです。tomajoDAOは、まさにこの仕組みを使って、農業に興味のある人々が主体的に関わり、活動しています。

人が集まるコミュニティの「旗」の立て方

「DAOへの流入動線をどう作るか」という問いに対し、とまたろうさんは「旗を立てる」「認知を広げる」「一貫性」の3つが重要だと語りました。特に強調されたのが「旗を立てる」ことです。

ただ「農業系DAOを作りました」というだけでは、人は集まりません。参加する理由となる「課題解決」や「悩み解決」に焦点を絞ることが大切です。tomajoDAOは「新規就農」「稼げない」「一人農家」といった具体的な課題に特化することで、「ここに入れば自分の問題が解決するかもしれない」という期待を生み、多くの人を引きつけました。

地域コミュニティも同じです。「〇〇町DAO」では人が集まりにくいでしょう。必要なのは「〇〇町 × 何か」という掛け算です。例えば、和歌山県白浜町の地域おこし協力隊が運営するLINEオープンチャットは、「白浜 × 観光」に特化し、「リアルタイムな地域情報が手に入る」という明確な価値を提供しています。今日の天気や海の波情報、ペット同伴可のカフェ情報など、旅行者が「失敗したくない」という不安を解消する生の情報が、参加の大きな動機になっています。

旗の概念図

認知の広げ方:二刀流とドブ板営業

旗を立てたら、次はコミュニティの存在を知ってもらう段階です。SNSを活用する際は、「浅く広く広めるならショート動画、深く狭く刺すなら音声配信」と、目的に合わせて使い分ける「二刀流」が効果的です。

しかし、とまたろうさんが「一番効く」と断言したのは、直接人に伝える「ドブ板営業」です。「人間は人間が好きなので、こんな人間がいてこんなことをしている、と熱く語れば必ず共感してくれる方がいる。そういう方々がコアメンバーになってくれます」と語られました。地元の商店を一軒ずつ挨拶して回るような、地道な活動が大きな力になります。

また、他のコミュニティとの連携も有効です。すでに別のコミュニティに参加している人は、新しいコミュニティへの参加ハードルが低いため、スムーズな流入が期待できます。

そして、発信からコミュニティの中身まで「一貫性」を持つことも重要です。「味噌ラーメン一筋十年」の店が選ばれるように、コンセプトにブレがないことが、選ばれるコミュニティになる秘訣です。

認知拡大戦略図

立ち上げ初期の心構え:「村長」としての振る舞い

コミュニティの立ち上げ初期に何をすべきか、その答えは意外にもアナログなものでした。「結局は人と人の人間関係」であり、デジタルコミュニティであっても「人間は人間に会いたいし、人間のレスポンスが欲しい」という点を忘れてはいけません。

ファウンダーは、まるで村長のように、新しく村にやってきた旅人(参加者)を一人ひとり出迎えることが大切です。コメントには即レスし、どんな来訪者にもとりあえず挨拶をする。「ここに人間がいる」と意識してもらうことで、立ち上げ初期の熱量を高めることができます。

熱量をつくる仕掛け

コミュニティの熱量を維持し、高めていくためには、いくつかの仕掛けが有効です。

  • メンバーとの音声対談: コミュニティに10〜20人集まった段階で、一人ひとりに音声対談を持ちかけることで、活発な活動が外から見えるようになり、新たな参加者を呼び込むきっかけになります。

  • 会いに行くYouTube企画: 「静岡のお茶農家のリアルを教えてほしい」といった依頼を自身のチャンネルで紹介し、ECサイトのリンクを貼るなどの交換条件で全国を回り、リアルとデジタルを行き来する動線を作りました。これにより「デジタル上では知っているがリアルは知らない」という状況をなくし、メンバー間のつながりを深めています。

  • 当事者になれる設計: ECサイト構築やNFT発行、イベント出展など、ファウンダーが企画を呼びかけ、得意な人を募って巻き込むことで、メンバーが「受けるだけではなく、自分が積極的に参加することに意義がある」と感じ、DAOへの思い入れを深めます。時には報酬付きの企画にすることも効果的です。

イベントの様子

音声配信を続けるコツ

「毎週AMA(Ask Me Anything:何でも聞いてください)をやっているのに人が来ない」という悩みに対しては、「大前提として、音声配信の集客はめちゃめちゃ難しい」と、とまたろうさんはまず現実を共有しました。その上で、毎週定時に必ず配信を続けること、そして他のSNSでも告知を徹底することが重要です。継続することで徐々に人が増え、熱量も上がっていくとのことです。

さらに、週1回だけでは弱いという指摘もありました。毎日更新するVoicyや、リレー形式での朝の音声配信など、頻度を上げることで、参加者の生活に「ながら聞き」として入り込み、習慣の中に取り込んでもらうことが、人を増やす鍵となります。

平和に続けるために:ルールを明示し、フィジカルイベントと連動

コミュニティを平和に継続させるためには、入会前にルールを明確に示し、そこに「こういうことをしたら運営者の一存で退会いただきます」といった強い表現を入れても良いとのことです。これにより「ここにいれば安心だ」という心理的安全性の高い空間を作り、コミュニティの質を保つことができます。

また、DAOはデジタル上の活動と思われがちですが、フィジカルイベントとの連動性が非常に重要だと強調されました。リアルな交流がコミュニティの盛り上がりにつながり、その盛り上がりがさらにデジタル活動を活発にするという好循環が生まれます。オンラインとオフラインをうまく組み合わせることが成功の鍵です。

質疑応答から見えてくる運営のヒント

勉強会では、参加者からの具体的な質問にも答えられました。

  • 声をかける相手は選んでいるのか?: 自分が作りたいコミュニティの雰囲気に合う人を選び、心地よいと思える人だけに声をかけることで、同じ属性の人が集まりやすくなり、初期の運営がしやすくなるとのことです。

  • SNSはどこからの流入が一番手応えがあるか?: とまたろうさんの例では、深く狭く刺さる「音声配信」からの参加者がコアメンバーになることが多いそうです。一方、X(旧Twitter)からの参加者は損得で判断する傾向があり、定着しにくいという見解が示されました。お金や損得以外の動機を持つ人をどれだけ集められるかが、コミュニティ継続の鍵となります。

  • 本業とコミュニティ運営、SNSの時間配分は?: 本業の農業が5分の1、コミュニティ運営が5分の1、YouTubeが5分の1、残りがその他という比率で活動していると明かされました。軌道に乗るまでは多くのリソースが必要ですが、一度回り始めればコアメンバーが運営を支えてくれるとのことです。

  • YouTubeは徐々に伸びたのか?: 50本、60本と再生されない動画を上げ続け、50本目で「ミニトマトの作り方」という動画が爆発的に伸びたそうです。継続とタイミングが重要だとわかります。

  • 1テーマのコミュニティと、不特定多数が参加する地域コミュニティの違いは?: 「不特定多数は集めない」と断言されました。地域であっても「地域の特性に焦点を当てて集める」ことが重要です。まず偏った属性の人々を集め、そこから口コミで多様な人々が波及していくのが作りやすい実践知として共有されました。

「地域×DAO」はビジネスチャンス

講演の締めくくりには、これから地域でDAOを立ち上げる参加者への力強いメッセージが贈られました。

「一気に1,000人来るとかあり得ないので、本当にコツコツやることが大事です。最初は辛いですよ。でもコツコツやっていれば成果は必ず出ます。なぜならば、世の中がコミュニティを求めているからです。」

そして、「先駆者になりましょう。このDAOでこの地域のこんな課題を解決した、という事例を皆さんが作っていく」ことが、将来的なビジネスチャンスにもつながると語られました。DAO活動によって地域の課題を解決できたなら、それは全国の地域が求める案件となるでしょう。「絶対にビジネスにつながりますので、ぜひ諦めずにDAO活動をしていきましょう」

講師紹介

とまたろうさんの顔写真

とまたろうさん
しばファーム 代表/農業系DAOコミュニティ「tomajoDAO」ファウンダー/株式会社あるやうむ DAOサポーター

滋賀県生まれ。大学卒業後、民間企業勤務を経て、2017年農家として独立。2022年6月、農業系DAOコミュニティ「tomajoDAO」を設立。「農家の所得を上げる」をコンセプトに、DAOによる問題解決に挑戦しています。メンバーは農業関係者だけでなく、経営者、会社員、主婦など多様で、現在登録者数は2,223人です。

現在の主な肩書・活動内容

  • しばファーム代表

  • YouTube「とまたろうチャンネル」運営

  • Voicy「農業で自由を手にするラジオ」パーソナリティ

  • JA大阪南青壮年部 副部長

  • 株式会社あるやうむ DAOサポーター

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