富山県が描く「外とのつながり」で地域農業を活性化する未来
人口減少が進む日本において、地域農業や農村の活性化は喫緊の課題です。そんな中、富山県が「持続可能な魅力ある田園地域創出事業」の一環として開催した「田園イノベーション・ミートアップ」は、地域間の学びとネットワーク構築を目的とした、まさに未来を拓くイベントとなりました。県内8地域の代表者20名が一堂に会し、それぞれの挑戦と課題、そして未来に向けた熱い議論が交わされました。

事業の肝は「外とのつながり」と「生業づくり」
イベントの冒頭、事業の統括プロデューサーである山口綱士氏(株式会社HAKUHODO DESIGN)は、「日本各地で人口減少が進む中、地域内だけで完結するコミュニティは成り立たなくなっています。求められるのは『外とどうつながるか』という視点です」と事業の趣旨を説明しました。
地域づくりの柱として挙げられたのは、二つの視点です。
- コミュニティづくり: 来訪者が「ずっと関わりたい」と感じる理由を作り、繰り返し地域に足を運んでもらうことで、非日常を日常に変えること。そのためには、まず自分たちの地域にどんなニーズがあるかを知ることが重要だと強調されました。
- 生業づくり: 地域資源を磨き上げるだけでなく、その価値を地域外でも通用するものに転換し、「収益の仕組みづくり」を確立すること。これは、持続可能な地域運営にとって不可欠な要素です。
山口氏は、「地域を磨き上げ、外とつながることで、世界が憧れる田園地域を創出していきたい。各地域のみなさんの実例から、その答えが見えてくると思います」と、参加者への期待を語りました。
各地で始まるユニークな挑戦と課題解決のヒント
ミートアップでは、富山県内の8地域がそれぞれの活動状況を報告。それぞれの地域が抱える課題と、それに対する具体的な取り組み、そして未来への展望が共有されました。生産者や就農者、農業関連事業者の皆さんにとって、自地域の課題解決や新たな事業展開のヒントとなる事例が満載です。
富山市大長谷:認定NPO法人化で資金を確保
27世帯39人の小さな集落である富山市大長谷では、地域おこし協力隊や自治振興会が中心となり、移住者や関係人口(特定の地域に継続的に多様な形で関わる人々)の増加に取り組んでいます。課題は受け皿となる住まい不足ですが、その対策として「NPO法人白木峰と大長谷を愛する会」の認定NPO法人化を計画。これにより、寄付金控除などの税制優遇を受けられるようになり、資金調達の道が広がります。有機農業の誘致や古民家リフォームも進め、地域の魅力を高める方針です。

射水市西高木:若手農業者の「モチベーション問題」にどう向き合うか
35歳以下の若手農業関係者40名で構成されるグループ「F35」は、「カッコいい農業」を目指し、レストランバスツアーや首都圏マルシェ、定期便試験販売など、意欲的な活動を展開してきました。しかし、メンバーが増えるにつれてモチベーションにばらつきが出始め、グループの目的があいまいになるという課題に直面しています。今後は古民家周辺の土地活用を進め、「メンバーそれぞれにメリットがあるグループ」への転換を目指します。山口氏からは「地域と関われる『関わりしろ』(余白)を作り、メンバーの活動も接続できる仕組み作りが大切」というアドバイスがありました。グループ運営に悩む方には参考になるでしょう。

富山市桐谷:地元住民と移住者、地域外者の協働モデル
地元住民、移住者、地域外者で構成する「桐谷六合企画」は、収穫体験や料理づくり、散策を楽しむ1泊2日のオーガニックビレッジツアーを実施。今後は桐谷らしいツアーを確立し、空き家活用や交流スペース設置で関係人口の増加を目指します。山口氏は「どんな人に何を提供し、何ができるのか」を意識して活動を進めることの重要性を指摘しました。

砺波市庄川:「小学生が大人になっても住み続けたいまち」へ
庄川地域では、こども商店や木育ワークショップ、クラフト展など、子どもたちを巻き込んだ多様なイベントを展開。地元野菜を活用したとうもろこしスープ開発も手がけるなど、既に多くの取り組みを進めています。ビジョンは「時をつむぎ、心をかさねる」。「まちづくり=人づくり」の輪を広げ、若い世代が地域と関わる楽しさを伝えていくことに注力しています。

富山市船峅:「人こそ最大の地域資源」という気づき
「ふなくら活性化協議会」と「ふなくらや企画」が合同で活動する富山市船峅では、住民参加の勉強会を通じて「人こそ最大の地域資源」であるという気づきを得ました。ビジョンは「村まるごとキャンパス」。持続可能なプロジェクト推進、外部とつながる入口づくり、宿泊体験実施などを計画しており、子育て世代を含め多様な層を巻き込みながらビジョンの実現を目指します。

射水市水戸田:「日常の延長にある非日常」を提供
人口約1,100人の里山地域である射水市水戸田は、陶房「匠の里」やいみず食香バラなど豊かな資源に恵まれています。住民参加のワークショップを通じて「人の心を耕す里山地域」というビジョンを策定。陶房を「水戸田地区の土間」と位置づけ、「火入れ体験」や「いみず食香バラの摘み取り体験」などを開催し、「日常の延長にある非日常」を五感で楽しめる体験とコミュニティづくりを進めます。

富山市神明:「通過する場所」からの脱却を目指して
今年度事業に採択されたばかりの富山市神明は、富山市中心市街地に近く「半市街地・半農村地」という特徴を持つものの、立ち寄れる場所が少なく「通過する場所」になっている点が課題です。農業の担い手不足や少子高齢化といった課題も抱える中で、アグリスポーツやひまわり畑、餅つき大会などを計画。山口氏からは、「地域外の人から『神明はこういうところ』と言ってもらえるものを作り上げることが重要」というアドバイスがありました。

射水市金山:松茸、鴨、ホタル…豊かな資源を活かす
松茸や鴨、ホタル、ビオトープなど多くの資源を持つ射水市金山では、地域の若手農業者を中心に多様な主体で活動が始まったばかりです。農業と食を絡めてビジョンを策定し、ピザ焼き体験や原木椎茸栽培を通じて「インターそばの里山オアシス」を目指します。山口氏は「この地域の魅力の根本は何か、それをどう見せていくか」をしっかり言葉にすることの重要性を伝えました。

地域を超えた学びの場:ディスカッションから得られるヒント
各地域の報告後、参加者たちは活動傾向が似ている4地域ずつ、2つのグループに分かれて活発なディスカッションを行いました。
グループA:農と空き家活用が中心
- 桐谷、金山、大長谷、船峅
グループB:場とコミュニティ運営が中心
- 庄川、神明、西高木、水戸田

議論の中では、実証実験を行った地域の経験談や課題、ビジョン策定で起こった問題点、仲間を増やす難しさ、誰でも交流できる場づくり、ネットワークを広げる具体的な方法、宿泊施設の整備方法など、多岐にわたるテーマが話し合われました。異なる地域の事例から刺激を受け、自地域での実践に向けた具体的なヒントを得られた参加者も多かったことでしょう。

今後の展望と参加への道
ミートアップの最後には、各地域の代表者から「熱量が高く圧倒された」「有意義だった」「活力を得た」といった感想が寄せられ、地域間のネットワーク構築の重要性が改めて認識されました。今回構築されたネットワークが、今後の各地域の活動にどう活かされていくのか、8地域の挑戦はまだまだ続きます。

富山県の「持続可能な魅力ある田園地域創出事業」は、地域の主体的な取り組みを支援し、外とのつながりを通じて新たな価値を生み出すことを目指しています。もし、この事業や各地域の取り組みに関心をお持ちの生産者、就農者、農業関連事業者の皆さんがいらっしゃいましたら、ぜひ下記までお問い合わせください。具体的な支援制度の条件や参加方法など、詳細な情報が得られるはずです。
お問い合わせ先
富山県知事政策局企画室成長戦略課
TEL.076-444-8961(平日 8:30~17:15)
MAIL.akiaku@pref.toyama.lg.jp





