地域農業

乳牛糞を原料に、国内初の「バッチ式乾式メタン発酵設備」が富士山麓で稼働 鴻池組が朝霧高原で資源循環型プラント

乳牛糞を原料に、国内初の「バッチ式乾式メタン発酵設備」が富士山麓で稼働 鴻池組が朝霧高原で資源循環型プラント
事業スキーム図 提供:(株)KSバイオマスエナジーに加筆
事業スキーム図 提供:(株)KSバイオマスエナジーに加筆

富士宮市根原で「富士山バイオマス乾式メタン発酵プラント」が運転開始

株式会社鴻池組(大阪市中央区、代表取締役社長 渡津弘己)は、2026年10月21日、静岡県富士宮市根原字宝山で「富士山バイオマス乾式メタン発酵プラント」の運転を始めました。乳牛糞などを処理する農産物処理加工設備です。発酵方式には、国内で初めてとなる「バッチ式乾式メタン発酵」を採用しています。これは同社が2024年9月時点で、プラント製造元であるドイツBEKON社へ確認した自社調べによるもので、日本国内の「乳牛糞を対象としたバッチ式乾式メタン発酵設備」としての位置づけです。

このプラントは、前処理設備や排水処理設備を必要としません。環境への負荷を抑えた、資源循環型の施設です。朝霧高原プロジェクトとして、農産物処理加工施設を営む富士バイオテック株式会社の敷地内に、ドイツBEKON社製の設備を設置しました。

プラント全景
プラント全景

家畜ふん尿の処理に、メタン発酵という選択肢

畜産を中心に発生するふん尿などを適正に処理することは、地域社会にとって継続的な課題となっています。廃棄物処理法施行令では、産業廃棄物となる動物のふん尿を「畜産農業に係るものに限る」と定めており、畜産農業に伴って出る家畜ふん尿は産業廃棄物に区分されます。その一方、環境省によると動物のふん尿の再生利用率は94.9%と高く、多くが堆肥やエネルギーなどに再生利用されています。

こうした資源循環を担う技術として近年注目されているのが、有機性資源を微生物の働きで発酵させる「メタン発酵」です。嫌気性発酵によってバイオガス(メタンガス)と消化液(液肥)をつくる技術で、既存の堆肥製造システムに組み込むことで、生まれたバイオガスを熱電併給システム(CHP)の動力として使えます。そこで発生した電気は固定価格買取制度(FIT)の対象として売電が可能です。また、原料に再生可能資源(バイオ廃棄物)を使うため、CHPの燃焼時に出るCO2は実質ゼロとみなされ、このシステムはカーボンニュートラルとして認識されます。

湿式との違いと、バッチ式乾式法の3つの特長

メタン発酵の主流である湿式法は、スラリー状の原料と消化液を混ぜて攪拌することで、効率よくバイオガスを生み出せます。ただし、前処理設備や排水処理設備の初期投資、消化液の臭気や排水といった環境負荷が課題とされてきました。これに対して乾式法には、湿式に比べて排水処理量が少ないという利点があります。今回の施設では、含水率の低い原料を発酵槽に詰め、消化液を循環利用することで排水設備を不要にし、環境負荷を極めて少なく抑えています。

主な特長

  • 前処理・排水処理設備が不要:湿式法で必要な前処理設備がなく、消化液を循環利用するため排水設備も不要。シンプルなプラント構造で環境への負荷を抑えます。
  • 攪拌動力が不要で運転管理も容易:含水率の低い乳牛糞などを発酵槽に充填し、動力による攪拌や切り返しは行いません。
  • 既存の堆肥製造プロセスとの親和性・地域密着:発酵後の残渣は堆肥として利用でき、既存の堆肥製造プロセスを活かせるため導入の難易度が低く、地域密着型モデルに適しています。

発酵の流れは、発酵槽を密閉して無酸素状態にし、上部から消化液を間欠的に散布して原料に染み込ませるというものです。約3週間かけて嫌気性メタン発酵を進めます。発酵後の残渣は堆肥製造の工程を経て堆肥となり、原料からエネルギー、堆肥までを地域の中で循環させる仕組みになっています。

複数企業の共創で推進、今後は処理量の拡大も

施設で発生するバイオガスは、副産物として熱電併給装置(CHP)の運転燃料に活用されます。プロジェクトには鴻池組を中心に、静岡ガス&パワー株式会社、株式会社クラフティア、株式会社ビーエイブル、富士バイオテック株式会社、株式会社KSバイオマスエナジーなど複数の企業が参加し、それぞれの知見を持ち寄って事業を進めています。

鴻池組はこれまで、島根県隠岐の島町の南谷発電所・油井発電所、兵庫県神戸市の東灘発電所、兵庫県香美町の小長辿(こながたわ)発電所といった小水力発電や、隠岐の島町で未利用木質バイオマスを使う下西バイオマス発電など、各地で再生可能エネルギー事業を手がけてきました。朝霧高原プロジェクトは、こうした分散型・循環型エネルギーの取り組みに連なる事業と位置づけられています。今後は原料処理量の増加や、余ったバイオガスの販売・活用にも取り組む予定です。

  • 施設名:富士山バイオマス乾式メタン発酵プラント
  • 所在地:静岡県富士宮市根原字宝山(富士バイオテック株式会社敷地内)
  • 運転開始日:2026年10月21日
  • 発酵方式:バッチ式乾式メタン発酵方式(ドイツBEKON社製、発酵槽5槽仕様)
  • 処理原料:主に乳牛糞
  • 事業者:朝霧バイオガス合同会社(メタン発酵によるバイオガス製造)/朝霧バイオパワー合同会社(バイオガス発電のFIT売電)
  • 開発・運営:株式会社鴻池組

出典:株式会社鴻池組

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