九州大学発のスタートアップである株式会社SACMOTs(サクモツ、代表取締役CEO:村上真哉)が、生物系特定産業技術研究支援センター(生研支援センター)による令和8年度「スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)」のフェーズ2(実用化段階)に採択されました。採択された課題は「エピゲノム制御技術を用いた環境ストレス耐性作物種子の実証研究」です。
この事業では、DNA配列を改変しないエピゲノム制御技術を使います。対象は水稲品種のコシヒカリとヒノヒカリです。高温条件下での収量・品質と、エピゲノムの安定性を検証します。圃場試験やエピゲノム検査を重ね、高温ストレスに耐性を持つ種子の実用化と社会実装につなげていく計画です。
なじみのある品種のまま、暑さに備える
イネは高温の影響を受けると、白未熟粒が発生するなど品質が低下することがあります。高温耐性品種の開発は進んでいますが、生産者や消費者に親しまれてきた既存品種に高温耐性を持たせることも、コメの安定生産を支えるうえで重要な課題とされています。
SACMOTsは、コシヒカリやヒノヒカリなどの既存品種を維持しつつ、高温環境下での収量と品質の維持・向上につながる種子技術の開発に取り組んでいます。種子の段階から高温ストレスに対応することで、気候変動下での持続的な食料生産への貢献を目指しています。
親の育つ環境で、種子のエピゲノムを整える
エピゲノムとは、DNAの配列を変えずに遺伝子の働きを調節する仕組みのことです。同社の技術は、種子を形成する親個体の生育環境を制御することで、そこから生産される種子のエピゲノムを調整するというものです。
同社はこれまで、研究用の水稲品種であるニッポンバレを使った複数年のフィールド試験で、高温条件下において対照区と比べて収量が増加し、品質が向上したことを確認しています。今回の事業ではこの知見をコシヒカリとヒノヒカリに当てはめ、実用化に向けて効果と安定性を評価します。
ポット試験から圃場試験へ、販売は2028年度以降を目標に
計画では、初年度に高温条件を再現した施設内でのポット栽培試験を行い、あわせて圃場試験の準備を進めます。2年目には、高温が想定される圃場での試験を予定しています。
- 対照区との比較による収量・品質の評価
- 種子のエピゲノム状態のばらつきと、生育・収量などの特性との関係の検証
- 実証結果をもとにした種子の供給・品質管理体制の整備
こうした取り組みを経て、2028年度以降の本格的な販売を目指します。将来的には、他品種・他品目への応用や海外展開も検討するとしています。
SACMOTsとは
SACMOTsは、九州大学の研究成果をもとに2025年12月に設立されました。代表取締役CEOの村上真哉氏と、取締役CTOで九州大学教授の石橋勇志氏を中心に、種子技術の社会実装に取り組んでいます。掲げるビジョンは「100億人の食卓と地球の未来を守る、次世代食料生産システムの実現」です。なお、生研支援センターによる採択の公表は2026年6月3日に行われています。
出典:株式会社SACMOTs





