佐賀県初の「自然共生サイト」で生物多様性モニタリングが始動!
佐賀県唐津市相知町横枕(おうぎまちよこまくら)で、地域ぐるみで里山の豊かな自然を守り育てる新しい取り組みが始まりました。ここは、佐賀県で初めて環境省に「自然共生サイト」(※1)として認定された場所。NPO法人唐津Farm&Foodと佐賀大学農学部の徳田誠教授、そしてシステム生態学研究室の学生さんたちがタッグを組み、生物多様性モニタリング調査の第一歩を踏み出しました。
※1:自然共生サイトとは、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を環境省が認定する制度です。地域ぐるみで生物多様性を守り、持続可能な利用を進めることを目指しています。

網とカメラで生き物たちを「見える化」
今回の調査では、水辺から林の縁まで、様々な方法で生き物の記録が進められています。
まず、タモ網や捕虫網、胴長を身につけて、田んぼの周りの水路やため池、林の縁などを丁寧に調査。網に入った生き物はその場で一つずつ確認し、記録していきます。初回の調査では、小魚をくわえた美しいカワセミの姿も確認されました。

また、人の目や網では捉えにくい、夜行性の生き物や警戒心の強い哺乳類などを記録するため、林の中には赤外線センサーカメラを設置。生き物の通り道を見極めて木に取り付けられたカメラは、昼夜を問わず横枕の生き物たちを見守ります。

この日の調査では、休耕田のあたりで赤い目が特徴的なネキトンボ(未熟個体)やカワニナの仲間、ため池のそばでタゴガエル、横枕神社ではイボバッタなどが確認されました。これらの種の同定は、佐賀大学システム生態学研究室の専門家によって行われています。


なぜ、この調査が必要なの?
横枕は、佐賀県で初めて環境省の自然共生サイトに認定された里山です。しかし、これまでの生き物に関する情報は、地域の方々の経験に基づくものが多く、科学的なデータとして残されていませんでした。
今回の調査の目的は、単にデータを集めることだけではありません。
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里山の価値を科学的に示す: どの季節に、どこに、どんな生き物がいるのかを継続的に記録することで、横枕の里山が持つ生物多様性の価値を客観的なデータで証明します。
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地域主体で活動を継続できる仕組み作り: 大学の専門家と一緒に、住民や高校生、大学生が自分たちで調査を続けられるような手順や体制を整えます。これにより、事業が終わった後も、地域の人々が主体となってこの貴重な里山を守り続けられることを目指しています。
NPO法人唐津Farm&Foodの副理事である木下翔太さんは、「私たちが毎日田んぼや山に入って手入れをしている場所だからこそ、どこにどんな生き物がいるかは体で分かっていても、記録に残さなければ人に伝えられない。今回の調査で積み上げたものを、地域で続けていける形にしていきたい」と語っています。

環境省の交付金を活用したプロジェクト
このプロジェクトは、環境省の「令和8年度 生物多様性保全推進交付金」(生物多様性保全推進支援事業)を活用して実施されています。これは、地域の生物多様性保全活動を支援するための重要な制度です。
事業名: 相知町横枕自然共生区域 生物多様性モニタリング高度化・地域主体管理体制構築プロジェクト
実施期間: 令和8年6月1日〜令和9年2月28日
協働: 佐賀大学農学部 徳田誠教授およびシステム生態学研究室、唐津の農業青年クラブ「4Hクラブ」、地域住民
この交付金は、全国104件のプロジェクトが採択されており、横枕の取り組みもその一つとして期待されています。
今後の展望
生物調査は、季節ごとに年3回の計画です。今回は1回目で、2回目は秋、3回目は晩秋に実施される予定です。同じ手法で季節をまたいで記録を重ねることで、横枕の環境に合った管理指標(※2)の作成へと繋げていきます。
※2:管理指標とは、環境の健全性や保全活動の効果を測るための具体的な基準や数値のことです。

相知町横枕自然共生区域について
佐賀県唐津市相知町にあるこの里山は、2023年度(令和5年度)後期に佐賀県で初めて環境省の自然共生サイトに認定され、2025年度には「生物多様性増進活動促進法(増進法)」に基づく認定へ移行しました。対象面積は36.67haと広大で、これまでの調査では約140種の生き物が確認されています(暫定値・精査中)。中には、絶滅危惧Ⅱ類のカスミサンショウウオの生息も確認されており、その豊かな生態系が注目されています。

NPO法人唐津Farm&Foodについて
NPO法人唐津Farm&Foodは、佐賀県唐津市を拠点に、環境教育(ESD)やサーキュラーエコノミー推進、生物多様性保全など、多岐にわたる活動を行っています。環境省認定の自然共生サイト(相知町横枕)の管理もその一つであり、地域と連携しながら持続可能な社会の実現を目指しています。
ウェブサイト:
この取り組みは、私たち生産者や地域農業に関わる人々にとって、里山や地域の自然環境が持つ「見えない価値」を「見える化」し、それを次世代に繋いでいくための大切なヒントを与えてくれます。日々の農業活動と生物多様性保全が両立する、持続可能な地域農業の未来を築くためにも、このような活動に注目し、できることから関わっていくことが期待されます。




