地域農業

AIで畜産が変わる!長野発「地域循環型GXプラットフォーム」で未利用食品資源が価値ある飼料に

どんな新しい取り組み?AIが導く「生体最適化型飼料」

この事業の核となるのは、AI(人工知能)技術と「サーキュラーエコノミー飼料」の組み合わせです。

これまで、牛の飼料は遠方から輸送されることが多く、輸送コストや環境負荷が課題でした。この事業では、地域の野菜加工副産物などの「未利用食品資源」を、AIの「深層学習」という技術を使って解析し、牛にとって最適な飼料へと転換します。

具体的には、深層学習(人間の脳の神経回路を模した「ディープラーニング」というAI技術で、たくさんのデータから自動で学習し、パターンを見つけ出したり、予測したりする能力があります。この技術を使って、飼料の最適な配合や水分率を導き出します)によるデータ解析と、飼料の「水分率最適化」を組み合わせます。飼料水分率最適化とは、飼料に含まれる水分の割合を、牛が最もおいしく食べられ、栄養を効率よく吸収できる状態に調整する技術です。水分が多すぎても少なすぎても、牛の食欲や消化に影響が出ます。

これにより、牛が嗜好性(食べやすさ)高く食べられ、かつ牛のゲップに含まれるGHG(温室効果ガス。地球温暖化の原因となるガスの総称で、牛のゲップに含まれるメタンガスもその一つです)の削減にも貢献する「生体最適化型飼料」(牛の健康や成長にとって、最も適した栄養バランスや嗜好性を持つように作られた飼料のことです)の確立を目指します。

解決できる課題とメリット

この「サーキュラーエコノミー飼料」(資源を使い捨てにせず、何度も循環させて利用する「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の考え方を取り入れた飼料のことです。地域の未利用食品を有効活用することで、環境への負荷を減らし、持続可能な畜産を目指します)の導入は、畜産農家や地域全体に多くのメリットをもたらします。

  1. 未利用食品資源の有効活用:今まで捨てられていた規格外の野菜や食品加工の副産物が、牛の飼料として生まれ変わります。食品ロス削減に貢献し、新たな価値を生み出します。
  2. 輸送コストの削減と環境負荷の軽減:遠方からの飼料輸送を減らし、地域内で資源を循環させることで、輸送にかかるコストや二酸化炭素の排出量を削減できます。
  3. 牛のゲップ(温室効果ガス)の削減:牛の生体に最適化された飼料を与えることで、牛の消化を助け、メタンガスなどの温室効果ガス(GHG)排出量の削減につながる可能性があります。
  4. 農家の収益性向上:地域の未利用資源を安価に飼料として活用できるため、飼料コストの削減が期待でき、農家の経営安定に貢献します。
  5. 地域内での資源循環の促進:食品企業、畜産農家、金融機関、大学研究機関などが連携し、地域内で資源がぐるぐると回る「地域循環型GXプラットフォーム」(「GX」とはグリーン・トランスフォーメーションの略で、脱炭素社会の実現を目指す変革を意味します。このプラットフォームは、地域の食品企業、畜産農家、金融機関、大学などが連携し、未利用食品資源を飼料として地域内で循環させることで、環境負荷の少ない持続可能な社会を目指す仕組みです)を構築します。

事業のロードマップ:2028年の社会実装へ

この取り組みは、単なる研究開発で終わらず、2028年の事業化と社会実装を目指して着々と進められています。

研究開発から社会実装へ

株式会社大澤屋が描くロードマップは以下の4段階です。

  • 第1段階:令和6年度(2024)未利用食品資源の飼料化研究〈検証〉
    野菜加工副産物などを対象に、乾燥技術の確立や牛の嗜好性試験を実施し、飼料化の可能性を確認しました。

  • 第2段階:令和7年度(2025)多原料配合・実証試験〈実証〉
    信州大学にラボプラントを整備し、様々な未利用食品資源を配合した飼料で実証試験を実施。飼料としての性能や農家の収益性への効果を検証しています。

  • 第3段階:令和8年度(2026)AI統合と飼料水分率最適化研究〈確証〉
    今回の採択事業です。深層学習によるデータ解析と飼料水分率の比較研究を統合し、最適な水分率を決定することで、「生体最適化型飼料」の確立を目指します。

  • 第4段階:2028年 事業化・社会実装フェーズ
    スタートアップ企業の設立、仕様書付きアップサイクル飼料の販売開始、そして「長野モデル」の地域循環構築、Jクレジット(省エネ設備の導入や森林管理などによって、温室効果ガスの排出量を減らしたり、吸収量を増やしたりしたときに、その削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。このクレジットは売買することができ、企業などが環境貢献の証として活用できます)の販売開始、AIスマート供給プラットフォームの運用を開始します。食品企業、畜産農家、金融機関、大学研究機関をつなぐ「地域循環型GXプラットフォーム」の完成を目指します。

これまでの取り組みと今後の展望

株式会社大澤屋は、青果の卸売・小売で培った産地とのつながりを活かし、規格外農産物や未利用食品資源に新たな価値を生み出す取り組みを積極的に進めてきました。これまでの実績として、信州大学の「信州100年企業創出プログラム」への参加や、公益財団法人長野県産業振興機構の支援事業への採択などが挙げられます。

今後は、国内外の販売網とこのサーキュラーエコノミー飼料を通じて、農業とデジタル産業をつなぐ地域循環事業へと成長していく予定です。ゼロカーボンで持続可能な畜産の実現に向け、地域の食品残さを地域の飼料へと循環させる「長野モデル」を、産官学連携で構築していくとのことです。

株式会社大澤屋について

  • 会社名:株式会社大澤屋

  • 所在地:長野県長野市東和田501番地4

  • 代表者:代表取締役社長 坂口政廣

  • 事業内容:青果の卸売・小売、未利用食品資源のアップサイクル事業ほか

  • URL:https://ohsawaya.co.jp/

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