生産者

食の未来を拓く!2026年度『bean47』賞受賞者に見る、地域活性化と持続可能な食産業のヒント

大賞:稲とアガベ株式会社(秋田県男鹿市)

集合写真

稲とアガベ株式会社は、「クラフトサケ」という新しいジャンルを確立し、地域活性化に大きく貢献しています。伝統的な日本酒醸造技術を尊重しつつ、日本酒にはない発酵文化を取り入れることで、お酒の新たな可能性を広げています。

さらに注目すべきは、年間400トンも廃棄される酒粕をアップサイクル(廃棄されるものに新しい価値を与えて生まれ変わらせること)し、発酵調味料や酒粕お菓子工場を開設した点です。空き家を改修してレストランや食品加工場、雑貨屋、飲食店、宿・ホテルを展開するなど、多角的な事業で新たな雇用を生み出し、男鹿の街づくりを推進しています。地元農家と連携し、耕作放棄地を開墾して無肥料・無農薬・自然栽培の米づくりに挑戦するなど、地域全体を巻き込んだ取り組みは、まさに地域活性化と持続可能な農業のモデルと言えるでしょう。

もし皆さんの地域にも未利用資源や空き家があるなら、稲とアガベ株式会社のように、それを新たなビジネスチャンスに変えるアイデアがあるかもしれませんね。

大賞:高村 浩一氏(高村刃物製作所、福井県越前市)

包丁

刃物の里・越前市で、高村浩一氏は「よい材料、よい鍛造・熱処理、よい研ぎ」という信条のもと、全て手作りの包丁を製造しています。単に「切れる」だけでなく、重心バランスや適度な重さ、しなり、砥ぎやすさまで追求した包丁は、国内外の有名シェフからも高く評価されています。

注目すべきは、伝統的な職人技を継承しつつ、粉末ステンレス鋼などの新素材をいち早く取り入れ、時代に合わせた製品開発を行っている点です。自身の息子たちにもその精神と技術を受け継がせ、日本の「ものづくり」精神を未来へとつないでいます。

生産者の皆さんにとって、自社の製品の品質を極め、伝統を守りながらも新しい技術を取り入れる姿勢は、市場での競争力を高める上で非常に参考になるでしょう。

生産者賞:大窪 和利氏(ダイワファーム 代表、宮崎県小林市)

宮崎県小林市で60年間酪農を営むダイワファームの大窪和利氏は、自社牧場のブラウンスイスなどの牛から生産した生乳を使い、国内外のチーズコンテストで数々の賞を受賞するナチュラルチーズを製造しています。

九州山地や霧島の豊かな水と緑に囲まれた恵まれた環境で、地元天然鉱山でろ過された地下水を与えて育てた牛から採れる、美味しく栄養価の高い牛乳。この良質な牛乳を惜しみなく使った「本当に美味しい乳製品」を追求し、乳製品の可能性を探求し続けています。地域資源を最大限に活かし、高品質な製品を生み出すこだわりは、消費者の信頼を得る上で欠かせません。

流通関係者賞:さんさんグリーン(社会医療法人みどり会、大阪府枚方市)

さんさんグリーンは、京都府京田辺市の耕作放棄地を活用し、農福連携(障がいを持つ方が農業分野で活躍すること)と6次産業化(生産者が加工・販売まで手掛けること)を実践しています。宇治抹茶や京の伝統野菜を栽培するだけでなく、加工品(抹茶菓子、調味料、クラフトビールなど)の製造販売や、新鮮野菜を使ったカフェ運営も行っています。

社会的に生きづらさを抱える人々に農業分野での活躍の場を提供し、質の良い食材を生産して料理人への流通販路を築くことで、地域になくてはならない存在として活動しています。耕作放棄地の活用と社会貢献、そしてビジネスを両立させる素晴らしいモデルです。

技術・研究者賞:平沼 貴之氏(平沼水産株式会社、埼玉県上里町)

平沼水産の平沼貴之氏は、埼玉県上里町と連携し、閉鎖的陸上養殖(外部環境の影響を受けにくい屋内の施設で、水を循環させながら魚を育てる方法)で衛生的で安全性の高い国産ニホンウナギを安定生産する事業に取り組んでいます。

徹底した水質管理のもと、環境への負荷も考慮したこの取り組みは、深刻なタンパク質危機や日本の食料自給率低下といった、世界が直面する食料問題への解決策として期待されています。先端技術の導入による安定供給と環境配慮は、これからの食料生産に求められる重要な視点です。

フードビジネス賞:安達 永補・真子氏(Happy Land安達牧場、北海道標津町)

Happy Land安達牧場の安達永補・真子氏は、「育て、育てられ、つなぐ一杯」をテーマに、生乳生産を通じて「食と命の大切さに触れて学べる牧場」を目指しています。地域交流や大学生・社会人の受け入れ、子どもの食育体験などを通して、生産者の想いや酪農への理解を深める活動を行っています。

牧場の暮らしや地域の観光資源を活かした体験型酪農家民宿としてステップアップを図るなど、酪農を軸に食農教育(食と農に関する知識や体験を通じて、食に関する健全な判断力を育む教育)と地域連携、観光を組み合わせた多角的な事業展開を進めています。次世代への食育や地域活性化に貢献する、未来を見据えた取り組みです。

まとめ

2026年度『bean47』賞の受賞者たちの活動は、食の分野における多様な可能性を示しています。地域資源の有効活用、伝統と革新の融合、社会課題の解決、そして次世代への継承といった共通のテーマが見えてきます。

これらの事例は、生産者の皆さんが抱える課題に対し、新しい視点や連携の重要性を教えてくれるのではないでしょうか。ぜひ、皆さんのビジネスや地域での活動に、これらのヒントを活かしてみてください。

本件に関するお問い合わせや、全日本・食学会の詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。